痴ほう症の概略

1. 脳血管性痴呆とアルツハイマー病の違い
脳血管性痴呆は脳卒中後に起きるものです(脳卒中というのは脳梗塞と脳出血が代表ですが、これらの発症後2年以内に脳血管性痴呆は起こりやすいといわれております)。これに対しアルツハイマー病は脳の変性疾患であり(基本的にはどんどん進行してゆきます)、遺伝性のものも知られておりますが、多くは散発性に発生します。

2. アルツハイマー病の症状
初期症状は記銘力低下ですが、本人は自覚していないことが多く、そのため「物がなくなった」などと言いますので、人間関係を悪化させ介護困難の要因となります。生理的な物忘れ(←老化に伴い誰しもあること)と痴呆による物忘れの違いは、たとえば生理的な物忘れでは昨日食べた物を忘れるという程度ですが、痴呆による物忘れでは食べたことそのものを忘れてしまいますので、食事直後にまた「食べたい」などと言うことがあります。

3. アルツハイマー病の診断
家族性アルツハイマー病では、タイプによっては遺伝子診断により確定診断の可能なタイプもありますが、ほとんどは散発性アルツハイマー病ですので確定診断は困難です。その中で期待されておりますのがアポリポ蛋白E4という採血検査です。この採血検査は保険適応となっておりませんので、自費で五千円〜一万円かかります。

4. 痴呆患者さんへの対応・介護
@優しく暖かく接する---痴呆患者さんは感情の起伏が
  激しく、冷たい態度・心もとない発言・馬鹿にした言葉
   などには敏感に反応しやすいので。
A理屈で対応しない---理屈を述べてもそれを受けとめ
   る判断力に障害があるので意味がない。それよりも  
   危険につながるもの(マッチ・包丁など)を手の届かな
   いと ころに隠し、未然に危険を避ける配慮が大切。
B刺激(脳活性化訓練)---例:デイケア等を行ってゆくこ
   と。
C顔見知りになる(頻繁に接する)---老年期痴呆患者
   さんは、自分に嫌いなことを強いたりさせたりする人を
   本能的に見分けることが多い(←痴呆が進んでも感
   性は残されていることが多いので)。また見知らぬ人
   に対して警戒心を強く持つ。
D孤独にさせず、コミュニケーションを図る。

5. 脳活性化訓練
@右脳刺激:音楽、ゲーム、スポーツ
A定期的肉体運動:ラジオ体操など
B老年男女交際
C日記を書かせる

アルツハイマー病の前駆症状
平均発症年齢は52歳です。

知的能力低下に先立つ2〜3年前から、軽度の人格変化(例: 頑固になった、自己中心的、人柄に繊細さがなくなった)、不安・抑うつ、睡眠障害、不穏、幻視妄想を認めることが多い。

アルツハイマー病第一期
健忘症状、空間的見当識障害(道に迷う)、多動・徘徊

アルツハイマー病第二期
高度の知的障害、巣症状(失語、失行、失認)

錐体外路症状(筋固縮)←パーキンソン病と間違われることもある。

アルツハイマー病第三期
高度な痴呆の末期で、しばしば痙攣、失禁、拒食・過食、反復運動、錯語、反響言語、語間代(例: ナゴヤエキ、エキ、エキ)

全経過
全経過は4〜8年(最近は6〜10年と延長)で、平均6.8年程度。生命予後が伸びた分だけ、介護(ケア)の必要な期間が伸びて大きな社会問題となっている。

治療
日本では、アルツハイマー型痴呆治療剤として、アリセプトという薬で治療されています

アリセプトの効果を提示しておきましょう。

軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆患者286例を対象にアリセプト5mg(3mg/日を1週間投与後、5mg/日を23週間投与)又はプラセボを24週間投与する二重盲検比較試験を実施した。
最終全般臨床症状評価において5mg群はプラセボ群と比較して有意に優れていた。「改善」以上の割合は5mg群17%、プラセボ群13%、「軽度悪化」以下の割合は5mg群17%、プラセボ群43%であった。

 

判定

著明改善 改善 軽度改善 不変 軽度悪化 悪化 著明悪化 判定不能 合計

投与群

5mg 例数 19 40 36 15 116
(1) (16) (34) (31) (13) (3) (0) (1)
区分% (17) (34) (31) (17)
プラセボ 例数 13 10 40 21 21 112
(1) (12) (9) (36) (19) (19) (4)  (1)
区分% (13) (9) (36) (43)

 

作用機序
アルツハイマー型痴呆では、脳内コリン作動性神経系の顕著な障害が認められている。本薬は、アセチルコリン(ACh)量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活する。